存在

 

露の滴る朝、彼女は大きな傘を差して路上で空を見上げていた。

 

朝陽も上がらない薄暗い世界。

 

彼女は何を見ているのだろう。僕はどこに立っているのだろう。ここはどこだろう。

たくさんの疑問が僕を包む。僕は傘を差してはいない。

でも、寒くは無い。疑問は尽きなかった。僕は誰だ。そんなことをふと考えた。

考えるほど知らないことをたくさん突きつけられているようで、不思議に嫌ではなかった。

ただ、気持ちが軽かった。


彼女は変わらず空を見上げていた。

足元の水溜りには、彼女の色鮮やかな黄色い傘が反射して、灰色の景色から漏れた光のようだった。