春か。

 

 

春という奴がやってきたね。そやつはよく深くってねえ、どうもじわじわと、登場したいらしいのさ。"あ、春だ"とか言うやつを驚かせたいらしく、次の次には寒い日がやってくるんだ。"あれ、春はどこだ"ひゅんと隠れてはひょっこり現れて、またひゅんと。またひょっこりと。ひゅんとひょっこりの繰り返し。だから皆、まだ安心しちゃいけない是よ。"繰り返すことに意味がある"奴は言うんだ。おまえが繰り返してることは、それはめんどくさいだろう。ひゅんとひょっこりを繰り返すのに楽しいことなんてあるのかい。"楽しいに決まってるだろう。暦は春だぞ"納得のいかないことが多々ある。春はそれでも繰り返すつもりだ。当たり前かのように。

白い色素に紅色を垂らす。桜色の優しい景色。私は、この、紅色の魅力に引き寄せられる。暖かい空気と、頭を撫でる陽射しの温もり。


"春か"


やっとそう思えた。条件を満たされた中の、納得。春よ。春だぞ。春が来たぞ。そう呟くと春が囁く。 "そんなのとっくに来ていただろう。今更何を言う"馬鹿な。春は今来たんだ。あやつは馬鹿なことをよく言う。

"そういう人間が多いんだよな。あたしはもう、とっくのとおにここにいたのさ。それが、あたしの楽しみだったのさ!人間は気付かないんだ。開花とか4月とか。あたしはちゃんといるのに。気付いたら春だもんな。"



七分で良いだろう。わたしの春はそうなんだ。七分丈を切るようになったら春。


あやつは、笑っているかな。



春が来たぞ。